アレルギーの理論と実践

アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息、鼻炎、結膜炎などアレルギー疾患に対する理論的考察と具体的実践

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言葉の定義

 本書において独特な言葉遣いに関する約束事である、言葉の定義について述べておきたいと思います。
 以前、陰陽師というのが流行し映画にもなりました。陰陽師が活躍した日本の平安時代に限らず、昔の人達は病気が『悪霊』のせいだと考えていました。現在の科学ではそれは完全に否定され、微生物、ウィルスなどの病原体、遺伝など様々な要因があることがわかっています。しかしだからといって当時の悪霊という考えを全て無視していいかというとそうはなりません。
 なぜなら当時の人たちが考える『悪霊』のイメージのなかには
1、『悪霊』は見えない。
2、『悪霊』は人の口から出入りする。
3、『悪霊』は人を病気にする。
4、『悪霊』は空気中を漂い、人にうつる。
というのがあります。
 この四つの悪霊の性質の『悪霊』という部分を『ウィルス』という言葉に置き換えてみてはどうでしょうか。飛沫感染するインフルエンザウィルスもこの条件も完全に満たします。つまり悪霊と呼ぼうがウィルスと呼ぼうがこの四つの条件に関して同じなのです。これは特別な物の考え方ではありません。

 数学のユークリッド幾何における公理でも同じ考え方をします。ヒルベルトがユークリッドの公理にある『点』、『直線』、『面』という言葉を『コップ』、『椅子』、『机』という言葉にかえても問題ないと言ったことと先ほどの『悪霊』の例えは全く同じ事なのです。
 このように言葉の定義が明確なればそこから論理展開でき、『悪霊』の性質から、悪霊とはなにか、そしてその治療法や対処法はどうすればよいかを知ることになります。例えば『悪霊』というものがなんであれ、上のような性質を持っているのであれば、患者の隔離などが論理的な解決策なはずで、そこから祈祷などの治療法は生まれてきません。もちろん祈祷という行為になんら効果がないといっているのではありませんが、少なくとも『悪霊』の定義からはそのような治療法を導くことは不可能でしょう。(悪霊の定義に、「死骸から『霊魂』が抜けて、病気を引き起こす『悪霊』になる」という条件を加えると、『悪霊』を祈祷かなにかで成仏させて『霊魂』にすれば、病気が治るという論理は通るでしょう)
 またアレルギーの『原因』が様々な仮説からどのような性質を持つものでなければならないかを逆算することも可能で、例えば『悪霊』が見えないで空気中を漂うのは十分に小さいからだなどといった感じです。
 このようにアレルギーに関して議論する際にもアレルギーの『原因』がもつその性質から推理してゆくことは無駄ではありませんし、むしろ『原因』を特定できなくても治療法を考えることもできるということを示すことが本書の目的となっています。 

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